• 台湾で行われたEDと片頭痛の疫学調査



    EDと片頭痛の関係

    Migraine and erectile dysfunction: evidence from a population-based case-control study.
    Cephalalgia. 2012 Apr;32(5):366-72. Epub 2012 Mar 9.


    バイアグラなどED薬を使用した場合、時々、片頭痛様の頭痛を訴える方がいます。
    偏頭痛持ちの方は、やや頭痛発症の頻度が高いように思われます。
    ED薬による頭痛は、当然ですが、ED薬の使用時のみに生じるわけで、実際の片頭痛とは異なります。
    また、性行為にともなる頭痛というのも存在します。これも、片頭痛とは異なります。
    ただし、これらの根底には、片頭痛と同様の機序があるのかもしれません。
    では、読み進めてみます。


    片頭痛は、全世界的にみられる一般的な頭痛の原因で、女性の18%、男性の6%に影響を与えています。
    他の慢性疼痛と同様に、片頭痛も、社会生活や仕事に影響をしえます。
    また、慢性疼痛は、性的欲求や性刺激、性活動など性機能に悪影響を及ぼします。
    片頭痛を含む慢性疼痛や過敏性腸症候群、間質性膀胱炎は、最近になり、一般的な中枢神経系プロセスとは、異なるものとして認識されております。
    このプロセスは、神経伝達物質により制御されていますが、神経伝達物質の制御不全は、性機能障害を生じること可能性が示されております。
    勃起不全と片頭痛は、根底には同様の機序が存在する可能性があります。
    一部の研究報告で、女性の片頭痛は性生活にネガティブな影響を与え、女性片頭痛患者の神経伝達物質レベルは、片頭痛のリスクと関係している事が示されていますが、 性機能における神経伝達物質の役割は二面性を示します。
    また片頭痛と勃起不全の関係を調べようとした研究報告はありません。
    ここでは、台湾の全国的なデータベースを用いて、片頭痛と勃起不全の関係を調査しております。


    台湾国民を対象とした国民皆保険からのデータベースを用いています(詳細は割愛します)。
    外来通院中の23,052名の対象者は平均年齢55.7歳で、5763名のED患者群と17,289名のコントロール群に分かれます。
    月収や都会化の程度、地理的条件、等でマッチングを行っています。
    年齢は30歳以上とし、EDは、勃起不全のみとし、器質性勃起不全です。ICD-9-CMを用いています。
    台湾では、内科医によりIIEF-5スコアとEDのリスクファクターの有無を既往歴から判断し、EDの診断をしておりますが、しばしば、EDの診断の正確性が問われるため、今回は、正確性を確保するために、2人の泌尿器科医により診断されたものをEDとして診断しています。
    器質性勃起不全のみに限定するために、精神科疾患患者は除外しています。ED患者群で、脂質異常症、高血圧症、糖尿病、腎疾患、冠動脈疾患の有病率が高く、対象群に比較して、肥満症で苦しんでいる方が多く見受けられました。
    アルコール中毒や依存症は、同程度です。
    片頭痛の有病率は、全体で3.05%。ED患者では4.25%であるのに対し、コントロール群は、2.64%と低率です。
    様々な要因を補正した片頭痛の有病率は、コントロール群に比較し、1.63倍となります。
    年齢別でみても、全ての年齢層で片頭痛の有病率が高率となっております。
    しかし、勃起不全と片頭痛の関連性は年齢とともに少なくなっています。
    30-39歳の年齢層で、最も関連が高いことが示されています。
    この年齢層では、1.99倍の片頭痛有病率を示しています。
    59歳以上の年齢層では、対象に比較し1.46倍です。
    また、片頭痛と診断された年月を、本試験に登録されてから1年以内、2年以内、3年以内と除外すると、片頭痛の有病率は、各々1.98倍、1.71倍、1.44倍となります。

    慢性頭痛を罹病した患者の性機能を対象にした研究報告は限られます。
    今回の報告は、勃起不全と片頭痛との関係を示した初めての報告と考えます。
    勃起不全患者は、対象と比較し1.69倍の片頭痛リスクを有していることを示しました。 また、高齢になるに従い、このリスクが減少する事も示しました。
    勃起不全の有病率は、様々な理由で、年齢とともに増加します。
    その多くは、片頭痛と関係がありません。
    男性ホルモンであるテストステロンの減少と、動脈硬化による血管抵抗の増加などが、主な原因となります。

    片頭痛の機序は、勃起不全と関係があるかもしれませんが、非常に複雑で、不均一な要素もあります。
    慢性疼痛は性機能障害を来たすことが示されているように、今回の研究で認められた片頭痛と勃起不全の関係は、 一つの可能性として、慢性疼痛に伴うものと説明でます。
    最近の研究では、慢性疼痛と急性疼痛と、そのメカニズムが異なることが指摘されています。
    慢性疼痛は、通常の中枢神経系プロセスと異なり、神経伝達物質は、on-offではなく、容量依存するように振舞うとされています。
    ドーパミンは、過去30年、片頭痛の原因として、重要な役割をすると考えられています。最近の研究では、ドーパミン関連遺伝子の多様性が報告されています。
    ドーパミンは、性的な感情を増大し、性行為を促すと考えられています。
    ドーパミンは、様々なカギとなる部位より、性行為前、性行為中と放出されます。そして、男性的な性機能を促進させます。
    ドーパミンのような神経伝達系は、EDや片頭痛と関係がある推測されております。
    神経伝達系の機能不全は、今回証明した片頭痛とEDの関係の、根底にある原因の一つと考えることもできます。

    一部の研究では、女性片頭痛患者の性活動に、ネガティブな影響を与えることを指摘し、神経伝達物質のレベルが、片頭痛のリスクを上昇させるとしていましたが、性機能不全に対する神経伝達物質の役割は、2面性を示しています。 今回示した片頭痛とEDの関係や、過去に報告された片頭痛と女性性機能の関係は、根底にある機序として、神経伝達物質の制御不全を共有しているかもしれませんが、この仮定は、後の研究報告で確かめられる必要があります。
    この研究報告は、台湾の大規模なデータベースを利用し、EDと片頭痛の関連を示しました。様々な余病で補正しても、片頭痛は、EDの独立した危険因子でした。
    過去に報告された研究の結果を支持しているものですが、より深い根底にある機序の理解と、EDに影響を与える様々な要因と、片頭痛の差異を調べるために、よりいっそうの研究が必要です。
    この研究では、いくつかの制限があります。 一つは、EDの診断に、ICD-9-CMが使われたことです。
    多くの研究報告では、EDはIIEFスコアまたはIIEF-5スコアで評価され、これは、ICD-9-CMを用いるより、より客観的な評価ができるとされています。
    二つ目は、台湾人は、文化的背景が、西欧諸国と比較して、EDの有病率を比較的低率にしていることです。
    その上に、ED治療薬の処方は、国民医療保険制度には、含まれていないことです。そのため、台湾の人々にとって、EDであると診断されることの利点がありません。
    本当にそEDで困っている場合に、恥ずかしさがあるにもかかわらず相談しているため、EDの診断の正確性は、逆に増していると考えられます。
    三つ目は、片頭痛の診断の正確性についてです。
    片頭痛の診断は、一般的にIHSの基準に従っています。
    その上、国民皆保険局が、定期的にチェックを行っています。これにより、正確さは確保されていると考えます。
    4つ目は、喫煙や酒量、結婚の有無など(いずれもEDに関連します)の個人の情報が利用できないことです。
    5つ目は、片頭痛と精神疾患の両方に罹患している患者を除外できていないことです。
    軽症の精神疾患患者は、医療のサポートを必要としていないため、データベースに反映されていません。
    最後に、台湾の医療制度は全国をカバーしていますが、その利用者に偏りが見受けられ、その説明がありません。
    そのため、この研究は目に見えないバイアスがかかっており、傾向の一部しか反映していない可能性があります。
    そこで、ED患者群とコントロール群の、試験登録前5年間の通院回数を調べています。 ED患者群は8.22回、コントロール群は8.16回と有意な差が認められませんでした。
    このことから、ED患者群とコントロール群で、受診するまでの行動に差が無いと考えています。


    この報告では、器質性勃起不全を調査していますが、ややその診断が甘い気もいたします。
    リジスキャン等を行うのが、より正確になるかもしれませんが、規模が大きいと難しいのでしょう。
    偏頭痛は、その増悪にメンタル的な要素を含む疾患ですから。
    逆に、心因性EDの偏頭痛合併率がどうなのか知りたいところです。
    今後の報告に期待しましょう。


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