甲状腺機能に異常が有ると勃起機能にも異常を呈する


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甲状腺機能と男性の様々な性機能障害,勃起不全ED

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甲状腺ホルモンの勃起機能に関する役割は、十分な研究がなされていません。
甲状腺疾患は、アジア人に多く認められる疾患で、日本人も例外でなく、多くの患者さんがいらっしゃいます。
例を挙げると、甲状腺機能亢進症の患者は、日本に10万人以上いるとされており、これは本邦の総人口の約0.1%に相当します。

原発性甲状腺機能亢進症は、バセドウ氏病とも呼ばれ、一度は聞いたことがあるかもしれません。
しばしば、芸能人等が、ご自身の甲状腺疾患、バセドウ氏病橋本病を告白され話題になることもあります。 最近でも、若手女性シンガーがバセドウ氏病で有ることを告白し、一時休業されていました。
また、原発性甲状腺機能低下症は、橋本病とも言われます。お気づきの方もいらっしゃると思いますが、日本人である橋本先生の名がついた病気です。
それだけ、日本人に多く、私たち臨床医にとって、なじみの深い病気でもあります。
過去、バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患に罹患すると、勃起不全ED含む性機能障害を生じる可能性があるとする報告が散見されています。
"性”を語ることがタブーではなくなった現在、甲状腺機能やバセドウ氏病や橋本病と性機能、勃起不全EDの関係を明らかにしようとする報告が相次いでいます。
ここでは、甲状腺疾患と勃起不全EDの関係について、皆さんに、ご報告したいと考えます。

甲状腺ホルモンは、簡単に言うと、皆さんのお体に活気を与えるホルモンです。お体の代謝を維持いたします。感情を安定させたりする作用もあります。
原発性甲状腺機能亢進症では、代謝が亢進し、感情が不安定でいらいらしたり、発汗過多や体重減少、動悸を自覚する事があります。 心房細動などの不整脈を誘発したり、バセドウ氏病の場合、眼球突出が認められる場合もあります。
原発性甲状腺機能低下症では、代謝が低下するため、何となく元気が無い、浮腫みやすい、脱毛が多い、など一見、不定愁訴ともとれる症状を認める場合があります。 また、単純にコレステロールが上昇しているだけであったり、めまいの原因であったり、うつ症状の原因であったり、認知症と誤診される場合もあります。
勃起不全EDも、症状の一つになりうるとのことです。
研修医の時に指導医に、甲状腺疾患は、常にその可能性を考え、積極的に疑っていかないと見つけられない、とよく言われたものです。 甲状腺機能異常による症状は、診療に慣れていないと、見落とす可能性があります。
症状の訴えが無い患者さんもいらっしゃいます。たまたま何らかの理由で受診したことをきっかけに指摘され、 治療後に初めて自分の体調が改善したことに気づく場合もあります。
勃起不全EDを愁訴に、甲状腺疾患を第一に疑うことはありませんが、勃起不全EDは、著しく生活の質(QOL)を損なうため、 甲状腺疾患患者、バセドウ氏病や橋本病患者には、症状の一つとして、勃起不全EDがあるかどうか、問診する必要がありそうです。

甲状腺は、前頚部の体表から近いところに位置する臓器です。
その甲状腺から甲状腺ホルモンが分泌されるのですが、詳しくお話しすると、甲状腺ホルモンの分泌は、中枢からの制御を受けています。 まず、視床下部から、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が分泌され、これにより甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌され、 この甲状腺刺激ホルモンにより、甲状腺ホルモンが分泌されます。
このいずれかの経路が障害を受けても甲状腺機能障害が生じます。 脳腫瘍や甲状腺腫瘍などが、例となります。
甲状腺疾患の多くは、先にあげた原発性甲状腺機能亢進症(バセドウ氏病)と原発性甲状腺機能低下症(橋本病)です。
この両方において、勃起不全EDが生じる可能性が指摘されています。

残念ながら、甲状腺ホルモンと勃起不全EDの、明確なメカニズムはわかっておりません。
先に書きましたが、甲状腺機能障害では、亢進症(主にバセドウ氏病)、低下症(主に橋本病)ともに、精神的な影響を与えます。 直接的に勃起不全EDに影響を与える可能性のほか、性欲も影響を受ける可能性があり、間接的ですが、勃起不全EDを生じる一因であることは想像できます。

甲状腺ホルモンの直接的な性欲、勃起に対する影響も指摘されています。
甲状腺ホルモンは精索を再生すると能力があるとされ、これも勃起不全EDに関係するかもしれません。
また、性ホルモン結合蛋白量を増加させます。これにより遊離している性ホルモンが影響を受け、勃起不全EDに関係してくる可能性があります。
甲状腺機能亢進では、男性ホルモンである テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換が増加しているとの指摘もあります。 やはり、勃起不全ED、性機能に影響を与えます。
αおよびβ甲状腺核内受容体は、陰茎海綿体に多く発現しており、甲状腺ホルモンが、陰茎海綿体の一酸化窒素NOによる反応を減弱し、勃起不全EDを発症している可能性があります。
甲状腺機能低下症において、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が増加している場合、 高プロラクチン血症を来たし、 低ゴナドトロピン血症が惹起される事も知られております。これは、男女ともに性機能に影響を与えます。
甲状腺ホルモンが過剰であっても、不足であっても、何らかの影響が甲状腺ホルモンの直接的な勃起不全EDへの影響は、 まだ、はっきりしていません。甲状腺機能と勃起不全ED、性機能障害の関係は、注目され始めたばかりであり、今後の報告に期待されます。

新宿ライフクリニックにも、時々、甲状腺疾患、バセドウ氏病や橋本病の患者さまが来院されます。
お話を伺うと、甲状腺疾患の治療により、勃起不全EDが改善したという方、全く勃起不全EDに影響がないというかた、まちまちです。
甲状腺疾患の程度の差もあると思いますが、勃起不全ED外来だけでなく、念頭に置いておかなければならない疾患の一つです。

バイアグラなどのED治療薬を使って、甲状腺疾患、バセドウ氏病、橋本病の具合が悪くなる心配はございません。 もちろん、レビトラシアリスも同じです。
ED治療薬と甲状腺疾患の治療薬との併用も可能です。


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