統合失調症の認知機能をバイアグラが改善させるかを検証報告した論文



統合失調症患者に対するバイアグラの認知機能改善効果を検証した報告

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統合失調症は、100人に1人程度の割合で認められる、比較的頻度の高い精神疾患です。 症状は、程度により様々で、治療が奏功し、健常人と同様に社会生活を送っていらっしゃる方、次第に症状が悪化していってしまう方、まちまちです。
バイアグラ(シルデナフィル)が、統合失調症の認知機能改善に有効であったとする報告がありましたので、解説を加えながら、ご報告したいと考えます。

統合失調症の原因、認知機能の低下の原因の一つとして、NMDA受容体(NメチルDアスパラギン酸受容体)の活性の低下が挙げられています。 NMDA活性を増強するような薬剤の効果は、一部で、陰性症状に対して有効であったとする報告され、 学習や記憶力に対して、影響を及ぼしたとする報告もございます。
動物を対象にした実験では、グリシンの部分的な作動薬であるDサイクロセリン(NMDA受容体を刺激し、活動性を向上させる)の効果は、 すぐに耐性が生じてしまうとのことです。
NMDA受容体から”下流”をターゲットにした薬物療法が、この耐性を回避し、代替療法となる可能性があります。

NMDA受容体の活性化は、細胞内へのカルシウム流入をもたらし、流入したカルシウムは、カルモジュリンと結合し、 神経細胞における一酸化窒素NOの合成を活性化し、その結果として、細胞内の一酸化窒素NOの濃度が上昇します。 この合成された一酸化窒素NOは、グアニリルサイクラーゼを活性化し、サイクリックGMPを増加させます。 つまり、NMDA-NO-cGMPの経路をうまく活性化させることが可能であれば、長期にわたり記憶力を増強し、維持できる可能性があると考えられています。
PDE5阻害剤は、当ホームページでも、度々説明させていただいておりますが、ED治療の中心となる薬剤です。バイアグラは、この範疇に含まれます。 このPDE5阻害薬、具体的にはバイアグラは、NMDA受容体を介することなくcGMPを増加させることが可能です。
また、NMDA受容体を介さないため、耐性を生じることなく、作用が持続する可能性があります。

現在のところ、バイアグラ(シルデナフィル)、レビトラバルデナフィル)、シアリスタダラフィル)、 アバナフィルavanafil(ステンドラ®)(本邦未認可)の4種の薬剤が、一般的に入手可能です。
これら薬剤は、血液脳関門を通過することができ、副作用は認容できるものであり、齧歯類での実験では、 認知機能の向上と神経保護作用が指摘されています。
PDE5は、ラットの脳(皮質及び海馬を含む)での発現が認められており、中期的なバイアグラ(シルデナフィル)の投与により、 脳皮質のcGMP濃度の上昇することも報告されています。
海馬内へのcGMP類似物の投与は、記憶の維持を容易にしたとする報告や、グアニル酸シクラーゼ阻害剤の投与(結果としてcGMPの減少をもたらす)は、 抑制性回避学習を減弱させたとしています。
ラットにおけるバイアグラ(シルデナフィル)の投与は、物体の認識の維持に有効であったとする報告や、 学習した不快な刺激に対する回避行動の記憶の維持に有効だったとする報告もあります。
バイアグラ(シルデナフィル)の容量依存性に、迷路の学習効果があったとする報告もあります。
バイアグラ(シルデナフィル)はまた、電気刺激など何等かの方法で消失した記憶の回復に有効であったとする、ラットを用いた実験もあります。 バイアグラ(シルデナフィル)による、記憶力の増強は、服薬してトレーニングしてから、その後、3時間程度持続しているとし、 また、服薬後すぐに効果が発現しているとしています。
このことは、後の回想に効果があるというよりは、むしろ、早期記憶に影響を及ぼしていると考えられます。
健康な男性を対象にした実験では、バイアグラ100mgの服用は、注意力と識別能力に影響を与えたとしています。
ここでは、バイアグラ50mg、100mgを用いて、統合失調症患者の認識力、臨床症状を改善するか検討されています。

外来通院中の統合失調症患者17名(男女含む)に対し、バイアグラ50mg群、100mg群、プラセボ群に分けています。
被験者の平均年齢は、49.7歳。 8例は男性で、残り9例は女性です。 コーカサス人が12例を占め、4例はアフリカ系アメリカ人、1例はラテンアメリカ人です。
5例はオランザピン(ジプレキサ)、2例はクロザピン(クロザリル)、2例はアリピラゾール(エビリファイ)、2例はリスペリドン(リスパダール)、 2例は定型精神病薬、1例はクエチアピン(セロクエル)、3例は複数の抗精神病薬を服用していました。
ベースラインとして、簡易精神症状評価尺度(brief psychiatric rating scale:BPRS)を施行し、 さらにその2日後に、ホプキンス言語学習検査(Hopkins Verbal Learning Test:HVLT)、論理的記憶検査(logical memory test)を施行しています。
被験者は、バイアグラまたはプラセボを服用して頂き、先に述べた検査を再び行い、比較しています。
17例中、検査を完遂できたのは15名。プラセボ群、バイアグラ100mg群の各1例が過敏性を理由に、脱落しています。
結果は、この報告では、バイアグラの認知機能における改善効果は認められておりません。

バイアグラ(シルデナフィル)が認知機能を改善するのではないかという仮説に基づき、この研究はデザインされたと思われますが、 残念ながら、これを支持する良好な結果は得られていません。
その理由については明らかではありませんが、様々な可能性を考えなければなりません。
一つは、単純にバイアグラの認知機能改善効果が小さかった可能性です。 また、今回設定された容量が、効果を示す範囲外であった可能性もございます。 実際に、動物実験では、バイアグラの容量と効果は、逆U字型の反応曲線を描く可能性が指摘できます。 また、動物実験で高容量が必要だったのは、その代謝スピードの速さが原因だったのかもしれません。
人間においては、バイアグラ50mg、100mgは、実質的には、脳内のPDE5を阻害しうる容量だと考えられています。

この報告では、1例の被験者が、バイアグラ100mgの服用後に副作用が認められ、脱落しています。
バイアグラの中枢性の副作用は、稀なケースとして存在します。 攻撃性の増加や記憶喪失です。
統合失調症におけるバイアグラ服用の安全性に関する報告もございます。
そこでは、バイアグラ25~75mgの服用は、精神症状を増悪させないとしています。

統合失調症患者は、神経におけるNO合成の異常が指摘されています。
NMDA-NO-cGMP経路の異常は、血中、脳脊髄液中のNO濃度、代謝、神経細胞におけるNO発現量など、様々な影響をきたすと思われます。
しかし、複雑な問題であり、すべてを解明することは、未だ困難です。
NMDA-NO-cGMP経路の異常は、PDE5阻害の効果を発現しにくくしている可能性もあります。
このため、健常者を対象にした研究が必要なのかも知れません。
加えて、人間では、PDE5ではなく、その他のアイソザイムのPDEを阻害することが、認知機能に及ぼす影響は大きいのかもしれません。
PDE4阻害剤は認知機能を改善させ、PDE10阻害剤は統合失調症に効果があるのではないかと研究されています。

今回の結果は、先にも述べましたが否定的なものですが、結果だけ鵜呑みにするのでなく、考察によって、次の研究が生まれます。 小さな発見の積み重ねが、医学の進歩に繋がっています。
PDE(フォスフォジエステラーゼ)は、様々な可能性を秘めた分野です。
次の報告を待ちましょう。


参考文献
A placebo controlled study of sildenafil effects on cognition in shizophrenia.
Psychopharmacology(2009) 202:411-417


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